中国版《ヴァギナ・モノローグス》上演運動

1.年表

中国版《ヴァギナ・モノローグス》上演運動は、フェミニスト行動派の登場よりずっと以前からおこなわれていましたので、その時期の活動も年表にしました。×印は、活動が弾圧された事件です。

(1)フェミニスト行動派登場以前

2001年
 英語版《ヴァギナ・モノローグス》が南京のジョン・ホプキンス大学中米文化センターで、センターの学生らにより上演される。
2002年
 3月 英語版《ヴァギナ・モノローグス》が上海アメリカクラブで上演される。収入はNGOの「DV反対ネットワーク」に寄付。
2003年
 12月 中山大学ジェンダー教育フォーラムとDV反対ネットワーク、広州美術館で、初の中国版ヴァギナ・モノローグス《陰道独白》上演。監督は中山大学教員の艾曉明と宋素鳳。オリジナルの内容として、「初潮」「子捨て」など加える。
2004年
 2月 ×上海話劇芸術センターが《陰道独白》上演を計画するが、当局に中止させられる。
 2月 ×DV反対ネットワークと北京今日美術館がバレンタインデーに北京で《陰道独白》上演を計画するが、当局に中止させられる。
 5月 上海の復旦大学の学生たち(のちセクマイ学生団体・知和社)が、大学内で《陰道独白》上演し、その後も現在まで毎年上演。
2005年
 3月 広西チワン族自治区にある、貧困な女児のための民間の学校・南寧華光女子中学の金鳳芸術団が、劉光華校長の指導の下に、20人の中高生で《陰道独白》上演。オリジナルな脚本として、農村での女児の進学難などの問題も加える。
 5月 北京大学劇社、《她(かのじょ)*独白》上演。オリジナルの脚本「纏足」「少女の妊娠」「コンドーム」「レズビアン」も加える。
2006年
 9月 武漢の華中師範大学の女子学生、性健康文化博覧会で《陰道独白》上演。中国性学会の専門家たちの注目も集める。
2007年
 11月 「中国話劇百年――華中大学話劇コンクール」で、武漢大学の「我們」劇社の《陰道独白》が受賞。×しかし、のちに受賞を取消される。
2008年
 5月 厦門大学版《陰道独白》上演。
 6月 北京の首都師範大学図書館学術報告ホールで《陰道独白》上演。荒林が指導教員。
2009年
 3月武漢で民間の劇団が設立され、11月以降、武漢大学、華中師範大学、武漢性学博物館、武漢VOXバーで上演。
 3月 北京の薪伝実験劇団、《V独白》を北京の9劇場で5回上演。大陸で唯一の版権を得た中国語バージョン。のち上海、深圳でも上演。
2010年
 4月 成都独白制作組、成都版《陰道独白》上演。
 5月 華中師範大学で「性科学文化週間」開幕、《陰道独白》上演。
 12月 南京大学第ⅠⅠ劇社、《陰道独白》上演。
2011年
 3月 上海の多くの《陰道独白》の劇組の出演者が合同で上演。
2012年
 4月 上海の海狸社、《陰dao多云》上演。同妻(ゲイの妻)、トランスジェンダーなどを取り上げるなど、オリジナルな箇所が激増、男性出演者も。

(2)フェミニスト行動派登場以後

この時期についても、行動派の活動でないものも含まれています。行動派と関係が深いのは「BCome小組」と「F女権小組」です。

2012年
 11月25日 北京のBCome小組、北京の地下鉄の車両内で、《陰道独白》の中の「私のミニスカート」の一節を演じる。目的は、痴漢を被害者の女性の服装のせいにする言説に反撃することと、実効ある反DV法制定のための署名の呼びかけ。この後も、毎年同日に、北京の地下鉄でパフォーマンス。
2013年
 1月 BCome小組、北京LGBTセンターで初の《陰道之道》上演。現在まで上演続ける(2015年8月時点で21カ所)。2014年版では、完全にオリジナルな脚本に。
 4月 中山大学ジェンダー教育フォーラムの劇組(のちの「山泉劇社」)、初の《将陰道独白到底》上演。副教授の宋素鳳と柯倩婷が指導。完全にオリジナルの脚本。
 11月 北京外国語大学で「ジェンダーと社会」課程の授業の課題として《陰道之道》上演。学生たちはさらに「私のヴァギナは言う」写真を公表するが、誹謗中傷も受ける。
2014年
 4月 ×山泉劇社が予定していた中山大学大学城校区明徳学生活動センターでの《将陰道独白到底》公演、中止させられる。
2016年
 1月 広州の若いフェミニストグループ「F女権小組」が、同小組版《陰道之道》初上演。2人っ子政策への移行が女性に与えた影響などの内容も加える。
 12月 若者3人による「Vagina Project」、北京大学生Fringe芸術祭の中で《陰道説》初上演。さまざまな女性やトランスジェンダーに取材して、完全にオリジナルの脚本。

2.関連ブログ記事

中国版《ヴァギナ・モノローグス》上演運動の展開――2003年~2016年――」( 2016-12-09)
また、以下の文献も、ぜひご覧ください。
・柯倩婷(熱田敬子訳)「グループを育て、社会とつなげる――大学でのジェンダー教育を活性化する新しい試み」、熱田敬子「『まんこ語り』が育むフェミニズム・アクション」村田晶子・弓削尚子編『なぜジェンダー教育を大学でおこなうのか:日本と海外との比較から考える』(青弓社 2017年)
・拙稿「中国版《ヴァギナ・モノローグス》上演運動と行動派フェミニスト」『中国女性史研究』第28号(2019年)