『アジアの仲間』と『CAWネットニュース』の中国関係記事一覧

(遠山日出也作成。2013年9月21日更新)

 アジア女子労働者交流センターの機関誌『アジアの仲間』と、それを引き継いだCAWネット・ジャパンの機関誌『CAWネットニュース』の中国(台湾・香港・中国本土)関係の記事を一覧表にまとめてみました。

 目次凡例台湾香港中国本土全体として

アジア女子労働者交流センターとCAWネット・ジャパンについて

 まず、アジア女子労働者交流センターとCAWネット・ジャパンについて簡単に説明いたします(アジア女子労働者交流センターについての記述は主に、広木道子『アジアに生きる女たち 女性労働者との交流十五年』[ドメス出版 1999年]にもとづいています)。

 アジア女子労働者交流センターは塩沢美代子さんが所長となり、1983年5月に発足しました。
 当時は、韓国や台湾、東南アジア諸国のほとんどが独裁政権下であり、労働運動は弾圧されていました。それらの政権は、安い労働力を求める日本や欧米の国々の資本を誘致し、そのために外資を優遇する「自由貿易地域(輸出加工区)」を設けました。その中では、農村から出てきた多くの若い女性が「女工哀史」のような劣悪な労働条件で働かされていました。
 こうした状況に対し、アジアのキリスト教団体が1981年にアジア女性労働者委員会(=CAW Committee for Asian Women)を結成して、女性労働者の問題に取り組みはじめます(事務所は香港に置いた)。そして、アジアに進出した多国籍企業の送り出し国・日本にも、CAWの活動と連帯するために「アジア女子労働者交流センター」が設立されたのです。

 CAWは最初は各国の女性労働者の活動を外部から支援する団体でした。しかし、1980年代半ばを過ぎ、アジア各国の独裁政権に対する民主化運動が広がるとともに各国に女性労働者自身の組織が設立されると、彼女たち自身の団体になっていきます。かくしてCAWはアジア13カ国の女性労働者のネットワーク・グループになり、日本からは、「アジア女子労働者交流センター」「女の労働わくわく講座」「女ユニオン神奈川」「おんな労働組合(関西)」の4団体が登録します。

 アジア女子労働者交流センターは、(1)アジアの女性を日本に招いておこなう交流プログラム、(2)アジアに行ってアジアの女性に学び、交流する研修ツアー、(3)アジアの問題を伝える情報・出版活動、(4)アジアに影響を及ぼす日本の国内問題に対する取り組み(教科書検定や女性の深夜・時間外労働規制撤廃に対する抗議活動など)をすすめました。

 (3)の活動の一つが機関誌『アジアの仲間』の発行です。『アジアの仲間』は中国(発刊の初期においては、本土ではなく、とくに台湾や香港)の問題も重視しました。
 たとえばその創刊号でも、日本のマブチモーターの香港の子会社「萬宝至実業」が、有害を承知で新工程を導入した結果、196人(うち195人は女性。13人は妊婦)の労働者が有毒ガスを吸い込んで病院に収容されたことを大きく伝えています。また、この記事は、香港では事件が連日報道されているのに、日本ではほとんど報道されないことも問題にしています。

 センターは財政上の限界で、2000年3月に事務所を閉じることになりますが、その後も、「CAWネット・ジャパン」という形で活動は継続されていました。
 日本からCAWに登録していたのは、「旧アジア女子労働者交流センター」と「おんな労働組合(関西)」に加えて、「女性ユニオン東京」です。

 近年、台湾や香港に加えて、中国本土も市場経済化が進んでグローバリゼーションに巻き込まれ、日中の経済関係はますます緊密なものになりつつあります。
 そのことによって、日本の私たちは労働者としても、消費者としても、中国の女性労働者との関わりがいっそう強まっています。それゆえ、私たちと中国の女性労働者との連帯はますます重要になってきていると思いました。
 CAWネット・ジャパンへの多くの人々の入会や協力を訴えたいと思います。

凡例
 ここでは中国関係の単独の記事だけを抜き出してみましたが、これら以外にも多くの記事が、アジアの女性労働者に共通する状況や女性労働者の国際連帯活動を述べる上で中国にも触れています。
 また、他の国々(韓国、フィリピン、マレーシア、タイ、インドネシア、パキスタン、バングラデシュ、インドなど)の女性労働者の状態や活動を述べた記事も、それらの国々の状況と中国の状況に似ている点もあれば異なる点もあることがわかるなど、興味深いものです。
 (短)と書いたのは、1ページの1/2〜1/4程度の短い記事です。
 (再)と書いたのは、『アジアの仲間』の記事のうち、広木道子『アジアに生きる女たち 女性労働者との交流十五年』(ドメス出版 1999年)に再録されているものです。
 『アジアに生きる女たち 女性労働者との交流十五年』は品切れのようですが、多くの図書館にあります。  『アジアの仲間』自体も、国立女性教育会館などが所蔵しているようです(合本も作成されていますが、在庫はなくなったようです)。
 『CAWネットニュース』は、各地の女性センターが所蔵しているようです(少なくとも私の地元である京都の「ウイングス京都」にはあり)現在、『CAWネットニュース』は、WAN(ウィメンズ・アクション・ネットワーク)の「ミニコミ図書館」ですべて読めるようになりました。CAWネット・ジャパン

1.台湾

(1)『アジアの仲間』

「“安くて従順な労働力をどうぞ”─自由貿易地域を訪れて─」(塩沢美代子)第1号(1983.1)(再)
「一日二食で家に仕送り 日本企業の女子労働者の生活」第3号(1984.1)
「女子の深夜業禁止規定強化 工場法に変わり労基法制定」第8号(1985.4)
「高雄輸出加工区を再訪して」(遠野はるひ)第13号(1986.7)
「もう黙ってはいられない 台湾でバス車掌の闘い」第15号(1987.1)(短)
「台湾であいつぐ工場閉鎖 高雄では新白砂電機が撤退」(遠野はるひ)第29号(1990.7)
「女性労働者の詩 台湾の輸出加工区から」同上
「台湾の女性労働者は今」同上
「台湾で国際婦人デー 政府は『女性の日』制定へ」第32号(1991.4)(短)
「多発する女性労働問題 雇用の不安定や健康障害など」第36号(1992.1)
「労働法改悪反対・台湾 女性5000人がデモ行進」第44号(1993.4)(短)
「資本の海外進出は30年前の日本と同じやり方」(シューシャン)第45号(1993.6)
台湾研修ツアー特集号第46,47合併号(1993.10)
 「“女性が変われば社会が変わる”」
 「労働者教育にとりくむSFWW 中高年女性の雇用問題も深刻化」(広木道子)
 「柔軟でパワフルな女性運動 様々な課題に挑戦する『婦女新知』」(堀部ゆり子)
 「台所のゴミから地球環境へ ユニークな活動広げる主婦たち」(福原宇子)
 「公娼制度の裏側で 買春街に売られる少女たち」(柴洋子)
 「女性と子どものためのセンター 進歩的な女性知事の下で実現」(奈須恵子)
 「加工区の女性労働者と交流 企業撤退相つぎ労働者も半減」(川口和子)
 「<台湾ツアー印象記>社会変革めざす女性たちの輝き」
 「明けない夜はない」(塩沢美代子)
「工場閉鎖時の失業手当は絵に描いた餅」第49号(1994.2)(短)
「売上げ、受注の減少理由に日本企業の工場閉鎖」第68号(1997.6)
「相つぐ工場閉鎖と海外移転」(ファン・チウフン)同上(再)
「公娼制廃止は是か非か?」第68号(1998.2)(短)
「台湾の元『慰安婦』提訴へ」第81号(1999.8)(短)

(2)『CAWネットニュース』

「日系電子企業で工場に籠城する女性たち」第1号(2000.7)
「<台湾・実地調査研究(1)>インフォーマルセクターの女性」第13号(2004.7)
「<台湾・実地調査研究(2)>インフォーマルセクターの女性」第14号(2004.11)
「<台湾・実地調査研究(3)>インフォーマルセクターの女性」第15号(2005.5)
「<台湾・実地調査研究(4)>インフォーマルセクターの女性」第17号(2006.1)
「<台湾・実地調査研究(5)>インフォーマルセクターの女性」第18号(2006.5)
「<台湾・実地調査研究(6)>インフォーマルセクターの女性」第19号(2006.10)
「台湾で働くフィリピン人移住労働者 労働者の権利より仕事の機会?」第26号(2009.1)
「台湾の青年と派遣労働者」第29号(2010.2)

2.香港

(1)『アジアの仲間』

「有害承知で新工程導入 10日間で196人ガス中毒 香港マブチモーター」(広木道子)第1号(1983.1)(再)
「頻発する労働災害 社会保障制度の確立が急務」第3号(1984.1)
「わずか四万円の罰金 マブチ社のガス中毒発生事件」同上
「中高年労働者に解雇手当 だが不安定雇用招く恐れも」第13号(1986.7)
「香港女性労働者の会設立 女性労働者の自覚促す」第30号(1990.10)(短)
香港・中国ツアー特集号第40,41合併号(1992.10)
 「安くて若い労働力求め香港から中国へ工場移転すすむ」
 「97年を目前にした香港社会と女性労働者の無権利状態」
 「ビルの中のジーンズ工場 ブランド品つくる女性労働者」(島岡弘子)
 「平等掲げ国際婦人デー 働く母親・失業女性を支援」(福原宇子)
 「新興住宅街の核家族支える主婦達のボランティア活動」(立中修子)
 「虐待された女性のシェルター 閉ざされた心開くオアシス」(山口祐子)
 「アジアの出稼ぎ労働者 組合つくって働く権利守る」(矢島由利)
 「私たちが見た香港・中国の『明』と『暗』」
「製造業からサービス業へ 増えているパートや日給労働者」(スーヒン)第45号(1993.6)
「女性差別撤廃条約批准求める女性たち」第48号(1993.12)(短)
「安全憲章を認め玩具労働者の安全守れ」第57号(1995.7)(短)
「香港の外国人労働者 85%が家事・育児に従事」第60号(1995.12)
「衣料産業の中国移転と女性労働者の大量失業」第68号(1997.6)(再)
「差別の壁厚いサービス産業」(チャン・イユチュン)同上
「家事労働者保護の法改正」第71号(1997.12)(短)
「香港女性おそう失業と不完全就業」(プンニャイ)第78号(1999.2)
「民営化された香港の清掃労働 労働条件低下まねく請負い制度」第82号(1999.10)

(2)『CAWネットニュース』

「香港・キャセイ航空 性差別控訴に敗訴」第6号(2002.2)
「香港・家事労働者組合 4・18条項を打ち破り、非正規労働者に権利を!」第10号(2003.7)
「香港・公共団地清掃労働者の一日」第11号(2003.11)
「メイドではなく、家事労働者」(広木道子)第23号(2008.1)
「香港ではじめての最低賃金」第32号(2011.2)
「香港・スーパーマーケットで販売促進の女性を組織化」(HKWWA[香港女性労働者協会]Meilin Wu)第36号(2012.6)
「フィリピン人家事労働者 永住権めぐり勝訴判決――香港」第34号(2011.10)
「香港の女性団体が保育所訪問」第37号(2012.10)

3.中国本土

(1)『アジアの仲間』

香港・中国ツアー特集号第40,41合併号(1992.10)
 「“時はカネ 効率はイノチ” 『香港化』めざして猛進」(澤田幸子)
 「男女平等、産休は七カ月 経済発展に貢献する女性たち」(黒岩容子)
 「私たちが見た香港・中国の『明』と『暗』」
「中国・深圳で、工場火災」第48号(1993.12)(短)
「靴工場のベンジン中毒で女性労働者が死亡・中国」第51号(1994.6)(短)
「中国・玩具工場の労働事情(1) 相つぐ工場災害 脅かされる命と健康」第65号(1996.12)
「同(2) 工場火災で多数の犠牲者 1日平均12時間労働」第66号(1997.2)
「同(3) 工場への保証金納めなお不安定な女性の雇用」第67号(1997.4)
「同(4) 工場火災の悲劇教訓に “玩具の安全生産のための憲章を”」第69・70号(1997.10)
「中国・ジリ玩具工場火災から4年─ある女性労働者のたたかい─」第73号(1998.4)
「中国のディズニー製造工場で労働者の人権侵害明るみに」第81号(1999.8)

(2)『CAWネットニュース』

「中国・深圳の工業区を訪ねて 消費者として何ができるか」(深沢三穂子)第3号(2001.3)
「若い出稼ぎ女性とともに 中国女性労働者ネットワーク」第18号(2006.5)
「(中国の女性移住労働者 ツァンさんの話)9つの工場での暮らし(1)」第19号(2006.10)
「(中国の女性移住労働者 ツァンさんの話)9つの工場での暮らし(2)」第20号(2007.2)
「(中国の女性移住労働者 ツァンさんの話)9つの工場での暮らし(3)」第21号(2007.5)
「(映画紹介)『女工哀歌(エレジー)』」第26号(2009.1)
「中国:WTO加盟の影響は? 労働者の声を聞く(1)」(May Wong)第32号(2011.4)
「中国:WTO加盟の影響は? 労働者の声を聞く(2)」(〃)第33号(2011.6)
「中国:WTO加盟の影響は? 労働者の声を聞く(3)」(〃)第34号(2011.10)
「中国:WTO加盟の影響は? 労働者の声を聞く(4)」(〃)第35号(2012.2)
「中国:WTO加盟の影響は? 労働者の声を聞く(5)」(〃)第36号(2012.6)
「中国:WTO加盟の影響は? 労働者の声を聞く(6)」(〃)第37号(2012.10)
「中国:WTO加盟の影響は? 労働者の声を聞く(7)」(〃)第38号(2013.2)
「労働者の抵抗が国有企業の団体交渉に道開く」第38号(2013.2)

全体として

――台湾や香港から中国本土への工場の移転がそれぞれの国に大きな影響。女性の雇用の非正規化の進行。

 こうして記事を一覧にしてみると、1990年頃に台湾や香港から中国本土への工場の移転がすすんだことが、それぞれの地の女性労働者に大きな影響を与えていることがわかります。
 この点について、広木道子『アジアに生きる女たち 女性労働者との交流十五年』(ドメス出版 1999年)は以下のように述べています(31-32頁)。
 「[19]87年には台湾で戒厳令も解かれ‥‥東アジアでは労働者の運動も活発になり、賃金も相対的に高くなって、国際競争力が低下し、80年代後半には、外資企業が次つぎと撤退をはじめ、より安い労働力を求めて東南アジアや中国に移っていきました。もちろん日本企業も例外ではありません。」  「こうした資本の動きは、とりわけ製造業で働く女性労働者に大きな影響を与えました。国の輸出産業の担い手として、低賃金・長時間労働に耐えてきた東アジアの女性たちは、工場閉鎖や海外移転とともに解雇され、職を失いました。とくに香港の中国返還を前に、中国への工場移転が進んだ香港では、膨大な数の女性労働者が職を奪われ、とくに中高年の女性たちは、性差別に加え、教育レベルや年齢制限という厚い壁に阻まれて、サービス産業などへの再就職はむずかしく、仕事さがしに苦労しています。」

 その一方、1990年代半ば以降中国本土の記事が増えていることに示されるように、中国本土が、かつての韓国や台湾などと同じように、独裁政権の下で外資を優遇する「輸出加工区」において農村から出てきた若い女性が劣悪な労働条件で働かされるという状況になっているわけです。

 また、以上のこととも関連して、どの地域でも女性の雇用の非正規化、インフォーマル化が大きな問題になっていることもわかります。

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